以前存在した日本の電気機器メーカーで三洋電機株式会社をご存じでしょうか。
大手他社電気機器メーカーに比べ、比較的リーズナブルな価格で家電製品を販売しており、私も引越しなどで家電を一式揃える場合など色々とお世話になったメーカーでした。
しかも良いも悪いも他社にはない新しい技術を取り入れ斬新的な製品もラインナップされ、個人的にはとても魅力的な家電メーカーの一つでもありました。
そんなサンヨーがパナソニックに吸収され消滅してしまうという話が出た頃、各種サンヨー製品がかなり値下げで販売されていたタイミングで、この知る人ぞ知る空気清浄機の名機ウイルスウォッシャーを購入しました。
しかしここ4,5年程使用せずに放置していると電解水ミストが放出されなくなってしまいました。
折角なのでメンテナンスついでに簡単に三洋電機についてやこのウイルスウォッシャーのご紹介を記事にしたいと思います。
三洋電機株式会社について
パナソニック(旧 松下電器産業)の専務取締役であった井植歳男氏が1947年に「三洋電機製作所」として独立創業したのが始まりです。
1949年に「三洋電機株式会社」となり、徐々に様々な家電製品を開発・販売していく事で国内外問わず事業展開し、日本の大手家電メーカーへと成長していきました。
事業規模も大きくなり多岐な家電製品を発売していく中、冒頭でもお伝えしましたが他社よりリーズナブルでしかも魅力的な性能を備えた製品を開発する事で、更なる知名度が高まっていきました。
グループ10万人規模の巨大企業として安泰に思われたが、家電の競争激化が進み2000年代半ばには経営危機に直面する事となっていきます。
さらには半導体事業への投資が負荷となり、不祥事などの逆風もあり度重なる人員削減などを行うも2011年にパナソニックの完全子会社となってしまいました。
これに伴いSANYOブランドを扱う三洋電機株式会社は事実上消滅する形となり市場からSANYOブランドが消えてしまいました。
パナソニックに吸収される形となりましたが重複する部門の取り扱いに懸念があった為、結果的に洗濯機や冷蔵庫などの白物家電事業は中国企業のハイアール(海爾集団)に売却する事で決着となりました。
三洋電機の衰退や消滅については様々な理由や都市伝説的な事も囁かれていますが、これだけの巨大企業が消えてしまったのは当時衝撃的なニュースでした。
加湿空気清浄機ウイルスウォッシャーとは
現在サンヨーの加湿空気清浄機ウイルスウォッシャーは通常の家電売り場では入手する事は出来ません。何せ三洋電機が存在していた時に販売していた製品ですから。
中古市場やヤフオクなどを探せばあるかも知れませんが、10年以上前の商品なのでまともな物は少ないかも知れません。しかもアフターサービスもSANYO自体がないので厳しい…
恐らく2010年9月1日に発売された「ABC-VWK71C」と「ABC-VWK60C」の2機種が最終モデルかと思われます。
私が持っているのはこの「ABC-VWK60C(W)」というモデルとなります。
ウイルスウォッシャー購入理由
なぜ私が三洋電機が無くなると知った上でこの空気清浄機を選んだかというと、脱臭や除菌が当時最強と密かに言われていた為です。
しかも当時ワーナー・マイカル・シネマズ(イオンシネマ)にこのウイルスウォッシャー技術の空気清浄システムが導入されるなど効果は間違いないだろうと確信したのも大きな理由でした。
投げ売りされていたのもあり車載キットも同封された小型空間清浄器「エアフレッシャー CAF-VW201A」も追加で購入してしまいました。
ただしこちらは数年で全く電解ミストが出なくなり処分してしまいました。
ウイルスウォッシャーの特長
オゾンやマイナスイオン、光触媒を使った脱臭機や空気清浄機はありますが、塩素が含まれた水道水(浄水したものはダメ)を独自技術により電気分解し電解ミスト放出する事で脱臭と除菌を行うという仕組みは画期的でした。
この電気分解した電解水には次亜塩素酸とOHラジカルが含まれ、加湿フィルターに浸透させ触れた空気を洗浄すると同時に電解ミストを放出する事で、ダブルの脱臭・除菌効果が得られるシステムとなっています。
ミストを嗅ぐと多少塩素っぽい臭いはするのですが、どちらかと言えば心地良いくらいで、暫くすると部屋の臭いが一気に消臭されるのに驚きます。体感では分かりませんがウイルスまで除菌してしまうなんて素晴らしいの一言です。
デメリット
これだけ効果を実感できる製品ではありますが、デメリットもあります。
まず一つ目としては、常に水道水を入れた状態でないと効果が発揮できないというのがあります。
冬場の乾燥した状態であれば良いのですが、夏場や湿度の高い環境などでは、これ以上加湿したくないというのがあります。
加湿モードだけでなく通常の空気清浄モードもあるのですが、どちらも電解ミストを放出する為には水道水が必要になり、水道水を入れないで作動させると警告ランプが表示されます。(一応フィルターを使った空気清浄は出来る)
二つ目のとしては、メンテナンスが面倒臭いという点です。
水道水を使わない空気清浄機ならば、フィルターの掃除だけで済みますが、こちらは常に水がたまった状態となる為、頻繁に水道水の交換や洗浄が必要となります。
これは加湿空気清浄機全般に言えるかも知れませんが、使用せずに水を溜めたまま放置すると内部がカビだらけになってしまい、余計メンテナンスが大変となります。
三つめは壊れても各種部品の修理パーツなど恐らく無い為、修理が難しい点です。
パナソニックに現在でも取扱説明書のPDFファイルは存在していますが、実際修理が可能かは微妙な所です。
中古等で購入する場合には、特に電解ユニットが壊れていると使用するには厳しいと思うので注意して下さい。
どうしても同様の技術を使った空気清浄機が欲しいという方には、元三洋電機技術者が立ち上げた会社の株式会社シリウスから販売されている「次亜塩素酸空気清浄機Viruswasher(ウイルスウォッシャー)」が後継機とも呼べる製品となっています。(製品名も一緒ですが価格は随分高くなっています)
またパナソニックからも「ジアイーノ」という次亜塩素酸を使った空間除菌脱臭機が販売されています。
ただし両製品とも水道水のみではなく塩や塩タブレットなどが別途必要になるようです。
ウイルスウォッシャーをメンテナンス
しばらく倉庫に仕舞ったままになっていたサンヨーウイルスウォッシャー。
いざ使用してみようと給水する前に内部を確認するとカビだらけとなっていました。
水は抜いておいたのですが、水に触れている部品をすべてしっかり乾かさなかったのが原因の様です。
まずはそれらのカビを除去する事から始めました。
カビを除去して水を入れスイッチオン!としてみましたが、全く電解ミストが出ません。
確かに以前使っていた時から、ミストの量が少ないなぁとは感じていたのですが、今度は全く見えないので、ネットで調べてミストを生成する振動板の汚れを除去する事にしました。
水が貯まるトレイを引っ張り出しカバーを外したところ。(事前にタンクや溜まった水は捨てて乾かしました)
電解ユニット部分のネジを外し、超音波振動板を取り出しました。分解自体は簡単です。
振動板を磨くのは怖いので、数時間クエン酸水に漬けてから金属部分の汚れを擦り落としました。
全て元通りにして再度タンクに水を入れ、フィルターに水が浸透するのを待ちます。
結果的には一応少しはミストが放出するようになりましたが、以前ほどではないので湿度が低い時期を見計らって様子見したいと思います。
まとめ
サンヨーの画期的な技術が詰まったこの空気清浄機は購入から十数年たった今でも十分威力を発揮してくれます。
少し前に世間の混乱を招いた流行り病の時にも、次亜塩素酸の除菌効果が注目されることとなりました。
除菌効果は体感では分からないのでアレですが、何と言ってもこの製品の消臭機能に関しては体感ですごいと感じます。
高濃度なオゾンなどを使った脱臭は人体に害を及ぼす可能性がありますが、比較的害の少ないOHラジカルと次亜塩素酸のダブル効果での消臭とアレルギー物質の除去技術は素晴らしいの一言です。
三洋電機を吸収したパナソニックのジアイーノや元サンヨーから独立した技術者が起業した株式会社シリウスのウイルスウォッシャーもこれらの技術を受け継いでいます。
庶民が手を出しずらい価格になってしまった事と塩を入れないといけない手間やランニングコストを考えると、サンヨーのウイルスウォッシャーは貴重だと考えています。
ただ水道水が必要、常時加湿状態、そして壊れやすい点などは気になる所ではあります。
もし今でも三洋電機が変わらずに存在していたら、リーズナブルでより進化した空気清浄機があったかも知れないと思うと、残念でなりません。